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矯正治療法の見方:矯正治療法のことを知りましょう

インターネットではさまざまな矯正治療法が紹介されています。そのほとんどは「全ての患者さんを●●で治します」「▲▲で治療期間が短縮されます」などメリットばかりが強調されていますが、メリットしかない治療法は存在しません。またある患者さんには最適であっても、全ての患者さんに適するということにはなりません。
さまざまな矯正治療法の特徴を知り、ひとつの治療法にこだわることなくカウンセリングに臨むと良いでしょう。

スピード矯正(コルチコトミー)

患者さんへの負担とリスクが比較的高い治療法

早く治療がすすむ治療という意味でスピード矯正と言う言葉がインターネット上で使われています。しかし、学問的に使われている言葉ではありません。歯ぐきを剥いで歯槽骨に切れ目を入れて(コルチコトミー)早く歯を動かそうという方法を指す場合が多いです。患者さんの負担は歯ぐきを剥離する必要があることと、それに伴い歯ぐきが退縮する場合(歯ぐきが下がり歯根が露出する。歯周病にかかって直った状態と同じ)があることです。 1970年代から現在に至るまで症例報告が散発的に報告されていますが、現在までにコルチコトミーをすると歯が早く動くというエビデンス(この治療が効果的であるという証拠)は確立されていません。簡単な言葉で言うと、全ての患者さんに負担が少ない処置で歯が早く動くのであれば本当によい方法なので、現在までの間に広く普及しているはずです。

本当に治療期間が短縮されたケースがあっても、デメリットには触れず、コルチコトミーをすることで全ての症例が短期間で治せるかのように謳っている場合は注意が必要です。

もっと問題なのは、治療のゴールをさげれば簡単に治療期間は短縮できると言うことです。コルチコトミーをしたこととは関係なく、術者(担当医)の治療のゴールがいい加減なために治療期間が短縮されている場合があります。

インプラント矯正

歯が「動き過ぎる」リスクも併せ持っている治療法です

インプラント矯正を行うと同時に多くの歯を目的の方向に動かせる場合があるため早く矯正治療が進むことがあります。しかし、インプラントを使用したからといって個々の歯の動くスピードが早くなるわけではありません。治療期間の短縮は症例によります。
インプラントを使用すると患者さんの努力(顎間ゴムや顎外固定装置の使用)が少なくてすむ場合がありますが、ゼロにはなりません(全てインプラントで解決できるわけではありません)。
また、インプラントを使用すると歯は移動可能な限界を越えて動くことができます。必要以上の力が歯に加わることがあると言うことです。そうすると歯の根が短くなったり、土台(歯槽骨)からはずれて機能しなくなります。
経験と分別のある歯科矯正医にかかることが必要です。

プチ矯正・部分矯正

治療前より咬み合わせを悪くしてしまう結果となることも

出っ歯や下顎前突の患者さんの様に上下の顎の位置に不調和がある場合でも歯の生え替わり時期を通じて何とか上下の歯を咬ませて機能できる位置に歯が萌出し、その方のお口の機能に適した形としてかみ合わせが完成します。つまり、見た目、審美的に問題があるものの、機能的にはある程度調和がとれた状態であるとも言えます。歯科矯正治療はその状況を壊しまったく新しい咬み合わせを創り上げる治療です。ですから新しい咬み合わせは理想的な状態でなくてはなりません。

歯並びを維持する力は基本的には咬む力です。上下の歯はきちんと咬み合うことがその場に歯をとどめてくれます。さらに言えば、きちんと唇を閉じることも必要です。悪い所だけ直してもそれが全体の調和がとれたものでない限りもとに戻ってしまいます。
例えば、出っ歯で上の前歯にだけ凸凹がある人の上のデコボコをキレイに治しても、下の歯ときちんと咬み合っていないのであれば、装置を外してしまえば後ろに支えがない出っ歯な上の歯は唇の力でまたデコボコになってしまいます。
「プチ矯正で矯正を体験してみませんか?」というのは「咬み合わせを不安定にしてみませんか?」とほぼ同義語です。部分的な治療のみでその結果を維持することは多くの場合困難です。

「プチ矯正体験2万円」は「下肢脱毛2,000円ぽっきり」とは違います。脱毛は他の部位を順番に施術していけばよいのですが、矯正治療はそのような手順ではできません。あとからすべての歯並びを綺麗にしようとした場合。最初の治療は全くの無駄になります。お試し感覚で安く治療を受けられたつもりでも、本当の意味での改善にはなっていません。

矯正治療後の再治療や補綴治療(入れ歯を入れたりブリッジをいれたりすること)に先立つ治療として、一歯二歯の歯の移動を行う場合があります。一部を除いては咬み合わせに問題がなく、部分的に歯を動かすことで全体の咬み合わせが整うようなケースで行います。

ブライダル矯正

一時的、部分的にきれいになるだけの施術はおすすめできません

結婚が矯正を始めるきっかけになることはとても良いことだと思います。より幸せになれるかもしれません。しかし、それが結婚式の時だけきれいならとか、前歯だけきれいならと言うことであれば、お勧めしません。 最適な矯正治療を計画し結婚式の時だけ装置を外す等まで行ってくれる先生であればよいかもしれません。 式まで期間が短ければ式後に開始してもいいかもしれません。

歯を削って前歯の歯ならびを整えることも選択肢の一つです。矯正と言いつつ補綴(歯を削る)治療を勧める歯科医師もいます。補綴物の寿命は平均5−10年くらいと言われています。やり直しの度にお金と歯の寿命が減っていきます。よく相談の上選択して下さい。

マウスピース矯正・見えない矯正

ごく限られた症例しか治すことができない治療法です

最新技術のように謳われることがありますがコンセプトは古く、近年コンピュータの発達に伴いリニューアルされて再登場した技術です。できない歯の移動〈生えていない歯を動かす〉があったり、苦手な歯の移動(前歯を十分に後退させる)がある装置です。まだ方法がきちんと確立しているわけではありませんので試行錯誤が行われており、限られた症例(数歯の不正や再治療には適してるかもしれません)にしか適用できない治療法です。 人間性がきちんとした先生のもとで治療されることをお勧めします。
もう一つ、注意していただきたい点があります。コンピュータで歯の移動をシュミレーションしますが、その通りに歯が動くかどうかは、担当医がどのように設定したかによります。担当医の知識と経験が少ない場合はそのとおりに動かない場合が多いです。

裏側矯正・舌側矯正・見えない矯正

表側矯正(唇側矯正)よりも慎重な歯科医院選びが必要です

裏側にブラケットがつくだけで、道具建ては表側と一緒です。時間と手間をかければ表側と同様の結果が得られるはずです。ですが隣の歯のブラケットとの距離が短いため硬く太いワイヤーが入れにくい、前歯をさげるときにブラケットとワイヤーが抜ける方向の力がかかる、上の裏側の装置が外れやすい(下の歯が咬むから)など、特有の条件があるため、不得意な歯の動きもあります。大きく前突した上の前歯をきちんと後ろに引くことは外側の装置に比べ苦手です。患者さんは発音に障害がでる方がいます。
そういった裏側矯正の特徴を十分把握している矯正医でなければ、時間がかかるばかりで良い結果を得られないことがあります。経験が豊富な良い先生とよく相談して下さい。

レーザー治療

痛みを軽減できる・・・とは限りません

レーザー治療で歯が動く際の痛みを軽減できたり、歯の動きを良くすることができるとうたっているホームページがあります。
現在の所、レーザーを用いた矯正治療の疼痛軽減効果は「期待ができる」程度で、使用を推進する信頼のおけるエビデンス(この治療がよいという証拠)は現在までの所ありません。歯の動きを良くする効果についても同様です。

床矯正(拡大矯正・抜かない矯正)

本当に床矯正装置だけで治せる症例はごくわずかです

学問的には、取り外し式のプレートで歯を動かす装置を床矯正装置と言います。ホームページ上で床矯正というと「取り外し式の装置で歯を抜かずに綺麗な歯ならびになる夢の様な装置」として取り上げている場合があります。
実際は、決して夢の様な装置ではありません。混合歯列期にデコボコの改善のために主矯正装置で歯列を拡大しても、ほとんどの場合は永久歯でエッジワイズ装置を用いた仕上げの治療が必要になります。床矯正装置による拡大だけで綺麗な歯ならびになった場合は、そもそも治療が必要なかったのかもしれません。

不正咬合になった原因は患者さんによって異なります。顎を拡大すれば誰でも自然と歯がきれいに並ぶわけではありません。床矯正装置だけで治せることを謳っている場合には注意が必要です。

痛くない・無痛治療

「痛い」と感じるかどうかは患者さん次第です

歯の移動に伴う痛みは個人差が大きいです。たまたまあなたのお友達はそれほど痛みを感じなかったとしても、あなたが同じ歯科医院で同じ治療法を受けたときに、同じように痛みを感じずにいられるかどうかはわかりません。
使用する装置による差もあると思われますが、学問的に証明されている装置はありません。痛みに関する記述はホームーページ開設者だけの意見としてとらえた方が無難です。

【失敗しない矯正治療】治療を始めるにあたって大切なポイントをご紹介します。