トップページ失敗しない矯正治療NG矯正の症例「高齢だから無理」と言われて/不適切な抜歯

「高齢だから無理」と言われて/不適切な抜歯

矯正治療が終ったけれど、歯並びも咬み合わせも治っていない。歯科医師には「あなたの年齢ではこれ以上無理です」と言われたが、治療結果に納得ができない。「本当に私の咬み合わせはこれ以上治らないのですか?」と、いなみ矯正歯科医院に相談にみえられました。

矯正再治療の前後

再治療を担当したJBO認定歯科矯正専門医
稲見 佳大(栃木県真岡市 いなみ矯正歯科医院)
年齢・性別
40歳(女性)
前歯科医院での治療
2本抜歯(上顎両犬歯)、取り外し式の装置による歯の移動
再治療を希望された理由
高齢だからこれ以上の治療は無理だと言われたが、治療結果に納得できないため

前医での治療

歯が動かないのは年齢のせい?

こちらの患者さんが、矯正専門の当院を訪れたのは40歳になってすぐの事でした。近所の歯科医院で取り外し式の装置を用い、歯並びの治療をしましたが、治療結果に納得できなかったためです。
お口の中を見せていただくと、上の歯の並びは比較的揃っていましたが、下の歯が上の歯よりも前に出ている受け口(反対咬合:はんたいこうごう)のままの状態です。咬み合せは全く治っていません。上の犬歯(前から3番目の歯)は、矯正治療のために前医で抜歯済みです。

転院時の歯並び

最初のお口の資料がありませんのでどの程度改善されたのかわかりませんが、こちらの患者さんはこの状態で治療の終了を言い渡されたのだそうです。当然、受け口(反対咬合)が治っていないことに異議を唱えましたが、「年齢が高くなると歯が動きにくくなるんです。もっと早くに始めればもう少しきれいになったのですが、あなたの年齢ではこれ以上は無理ですよ。」ときっぱりと言い切られたそうです。
長い時間をかけて頑張って来たことを考えるとどうしてもあきらめきれず、今度は矯正専門の歯科医院に相談しようと思って当院へいらっしゃいました。

いなみ矯正歯科医院での治療

診断ミスを患者さんのせいにしないで!

前医は年齢のせいで歯が動かないと考えていたようですが、こちらの患者さんは歯やあごの骨などがしっかりしており、40代という年齢を矯正治療ができない理由にすることはできません。本当の理由は、前医が診断ミスを犯したことにあります。

本ケースは本来、上下の抜歯が必要なケースです。抜歯をしなかったために十分な移動スペースを確保できなかった下顎の歯列が突出してしまっていることからも、上の犬歯だけを抜歯するという診断自体が誤っていたことがわかります。患者さんの年齢のせいではありません。 当院でのやりなおし矯正治療は、下の前から4番目の歯(下顎第一小臼歯)の抜歯を一般歯科医の先生にお願いするところから始まりました。上は犬歯を抜歯したから下も犬歯を抜けば良いようにお感じかもしれませんが、犬歯というのは咬み合わせを作るために非常に重要な歯で、本来丈夫で寿命も長いものです。抜歯部位を合わせるためだけに抜いてしまうにはデメリットが大きすぎるため、第一小臼歯を抜くことにしました。

抜歯をした後は特別な処置を施すことなく、ごく当たり前のワイヤー矯正を行いました。前医に「これ以上は無理」と言われた患者さんの歯はぐんぐん動いて、わずか1年6ヶ月後にはきれいな咬み合わせとなりました。

転院時の歯並び
矯正再治療後の歯並び

検証

抜歯部位・本数を誤るという、単純な診断ミス

本ケースはそもそも上下小臼歯、合計4本の抜歯が必要なケースと推察され、前医の様に上だけ抜歯して治療する事は考えられません。抜歯部位についても前医は犬歯を抜歯していますが、通常は考えにくい抜歯部位です。前医に治す事ができなかったのは、決して難しいケースであったからではありません。専門医であれば非常に易しいケースで、当院では1年6か月という矯正治療としては短い治療期間で終了しています。

なお前医による治療の一環で、当院初診時には上顎側切歯(上の前から2番目の歯)は抜髄(神経を抜く処置の事)済みで、質の低いレジンジャケット冠(被せ物の歯)になっています。抜かれてしまった歯の神経は生き返りませんが、適切な再治療を行い歯の色も合わせれば、より美しい口元になるに違いありません。

【失敗しない矯正治療】治療を始めるにあたって大切なポイントをご紹介します。