トップページ失敗しない矯正治療NG矯正の症例4年たっても治らない/診断ミス・治療計画が不十分

4年たっても治らない/診断ミス・治療計画が不十分

歯を抜かない拡大矯正治療を受けた患者さんが、4年たっても治らないことに不安を感じてセカンドオピニオンを求めて来院されました。前医が"歯が動いていない"ことに気付かなかったことに加え、あとどのくらいかかるのかきいてもはっきり回答できない、説明なしに治療方法を変えるなど、きちんとした治療方針を持っていなかったために起こったと考えられるケースです。

矯正再治療の前後

再治療を担当したJBO認定歯科矯正専門医
星 隆夫(神奈川県相模原市 星歯科矯正)
転医時の患者さんの年齢・性別
51歳3ヶ月(女性)
前歯科医院での治療
拡大装置による非抜歯矯正
再治療を希望された理由
4年以上たっても治らない上、十分な説明がないまま治療方針が変わってしまったことに不安を感じたため

前医での治療

4年たっても治らない?

転院時の歯並び こちらの患者さんは初診時年齢51歳3ヶ月の女性で、矯正治療の継続を主訴に星歯科矯正に来院されました。お口の中を拝見しますと、下の歯にはマルチブラケット装置、上の顎には拡大装置(※)が装着されていました。

床矯正装置(拡大装置) (※)拡大装置
あごの骨を拡大するための取り外し式のプレート装置で、拡大床(かくだいしょう)、床矯正装置(しょうきょうせいそうち)とも言います。ネジで押し広げたり、ワイヤーの弾力を利用して少しずつあごを広げて行きます。
拡大装置には様々な種類があり、患者さんの年齢やあごを広げる量や部位によって適切なものを選ぶ必要があります。

治療前より悪くなっているなんて・・・

患者さんは4年3ヶ月前に東京都中野区の床矯正装置を使って抜かずに治すという歯科医院に通院を始めました。その歯科医院で治療を始めるときに取った歯の模型をお持ちでしたので、元々のお口の中の状況と今のお口を比較して治療の経緯を確認しました。

矯正治療を始める前の歯並び
来院時の非抜歯矯正後の歯並び

元々の歯並びは上下にでこぼこが見られ、前歯は咬んでいませんが奥歯は咬んでいます。それが4年半後には一番奥の歯が咬んでいるだけでその他の歯は咬まない状態になってしまいました。

4年3ヶ月の間、海外に住んだ数ヶ月以外はずっと通院していたそうです。さすがに不安になって担当医に「あとどれくらいで終わりますか」と質問しても明確な答えは返ってきませんでした。治療中、上の顎にマルチブラケットを装着するといった治療方針の変更の話は一切なかったそうです。不安になりセカンドオピニオンを求めていくつかの歯科医院を訪ねた結果、星歯科矯正に転医しました。

星歯科矯正での治療

"動かない歯"を動かす

星歯科矯正の検査の結果、上顎右側の犬歯が骨と癒着して動かない状態(アンキローシスまたは骨性癒着といいます)であることが判明しました。動かない歯があることに気づかないで矯正治療を進めるとこのように咬まない状態になります。矯正専門医であれば、その経過から骨との癒着を疑い治療方針の変更を考えます。前医はそれすらしていません。前医は歯科矯正治療のきちんとしたトレーニングを受けていない可能性が高いです。
星歯科矯正では上下顎にマルチブラケット装置を装着し、骨性癒着歯は脱臼させてから(骨から一時的に引きはがしてから)動かして治療を行いました。当院での治療を開始してから10ヶ月~11ヶ月の間の写真を連続でご覧いただければ、動かなかった右上の犬歯がしっかりと動いているのがわかります。

矯正再治療の経過

きちんと咬んでいる歯並びに

歯の移動は順調に進み、14ヶ月後にマルチブラケット装置を撤去し保定装置(リテーナー)を装着しました。開咬合は改善しよく咬んでいます。

矯正再治療後の歯並び

検証

技術不足による診断の誤り

この症例の問題点は前医に骨性癒着歯を診断する能力がなかったことです。それ以前に拡大床装置という装置ありきで、治療方針というものがなかった気がします。「あとどれくらいで終わりますか」という問いに対して答えるのは歯科医師としての最低の責務だと思います。 治療中に不安や疑問を感じたら、遠慮なく担当医に質問してください。質問に対してどうしても十分な回答が得られず不安が解消されないようであれば、こちらの患者さんのように複数の矯正医にセカンドオピニオンを求めることも検討されると良いと思います。

【失敗しない矯正治療】治療を始めるにあたって大切なポイントをご紹介します。