治療症例:JBO認定専門医が治療をおこなった症例をご紹介します。
大人の矯正 偏位咬合(咬み合わせのずれ)Case3
外科・非外科のボーダーラインケースの治療症例


■症状
- 患者さん
- 11歳7ヶ月 女性
- 主訴
- 前歯の歯並びがでこぼこしていて悪く、変なところから歯が生えて来たことをきにされて、一般歯科からの紹介で来院されました。
- 所見
- 外科・非外科のボーダーライン・ケース。
- 下顎の右側が長く、下顎前歯の正中が左側に偏位している。
- また、左上臼歯の舌側傾斜、左下臼歯の頬側傾斜により交叉咬合を呈している。
■治療期間
2年5ヶ月
■治療内容
外科手術は行わず、矯正単独で治療しました。
下顎歯列偏位の改善を主体とし、非対称的な抜歯(右側上下顎と左側上顎は第一小臼歯と第二乳臼歯を抜歯。左側下顎は第二小臼歯を抜歯)を選択しました。
治療について
■治療前
こちらの患者さんは、前歯がガタガタになっていることと、歯が重なって生えて来ていることを気にして一般歯科を受診され、当院を紹介されたそうです。
歯列の乱れだけではなく、口元の歪みも認められましたが、患者さん本人も保護者の方も顔貌や口元の形態については気にされていませんでした。
正面セファログラムの赤い矢印が前歯の正中(真ん中)ですが、上顎に比べて下顎の右側が長く、オトガイ(赤い三角印)とともに正中が左側に偏位しています。
骨格性の不正咬合ですが、こちらの患者さんの場合は、外科矯正でも単独矯正(外科手術を伴わない一般矯正)でも治療可能なボーダーラインケース(※1)と診断しました。
診断時のコンサルテーションで、ボーダーラインケース※1であることと、外科矯正・一般矯正の両方のメリットとデメリットを説明した上で患者さんの要望を伺い、外科手術は行わず、矯正単独で治療を開始することとなりました。
※1 ボーダーラインケース
外科矯正・非外科矯正のどちらでも治療可能なケースのことです。
骨格性の不正咬合では外科手術を伴う矯正治療を必要とすることが多いのですが、骨格系に不正咬合の主たる原因がある場合にも、まずは(1)歯牙系で骨格系の問題を代償できるかどうかを検討します(できること、できないことを考える)。(2)歯牙系で対処できないと思ったら、次に外科的手段を検討します。
手術を行うか否かは、診断時の患者とのコンサルテーションにおいて、(1)手術を行う場合のメリット、デメリット(2)手術を行わない場合のメリット、デメリットの2つを提示し、それに対する患者さんの価値判断と社会的背景によって、ある程度決まります。
■治療の開始
左上臼歯が舌側に傾斜し、左下臼歯が頬側に傾斜して交叉咬合(歯列の一部の咬み合わせが前後逆になっている状態)となっていました。
下顎のずれを改善するために、上顎は左右の第一小臼歯(4番)と第二乳臼歯(E)を、下顎右側は4番・Eの2本、左側は第二小臼歯(5番)のみという非対称的な抜歯を行い(×印)、スタンダードエッジワイズ法で治療を開始しました。
偏位咬合の治療は、歯列弓(アーチフォーム)の調節や臼歯部の左右のねじれ(トルク)調節を自在に行う必要があるため、ワイヤーの屈曲を行うスタンダードエッジワイズ法が適していると考えます。
■治療後
顔の正中線を改善するには外科手術が必要となりますが、歪んでいた口元は単独矯正でも改善されました。
(顔の正中線の改善については、治療前に患者さんに説明を行い、了承を得た上で単独矯正を開始しました。)
正面セファログラムで治療前後を比較すると、上下前歯の正中(赤い矢印)が一致しています。
また、左の下顎臼歯部が上顎臼歯部の内側に収まり、交叉咬合が改善されていることもわかります。
この後、2年1ヶ月の保定期間を経て、治療を終了しました。
