治療症例:JBO認定専門医が治療をおこなった症例をご紹介します。
大人の矯正 上突咬合(いわゆる上顎前突・出っ歯)Case2
歯や骨の成長期を過ぎた成人の上突咬合(出っ歯)治療症例


■症状
- 患者さん
- 24歳1ヶ月 女性
- 主訴
- 歯のでこぼこと前歯が出ていることを主訴として一般歯科より紹介され来院されました。
- 所見
- 右上2(中心から数えて2番目)の歯は、幼少時に打撲したため保存が不可能。High Angle Case(顎が細く、面長)(※1)で、上顎からオトガイの先端までが長め。口唇閉鎖時の筋緊張感は、8.0mmというオーバージェット(上の前歯が突出している程度)(※2)が大きい問題の他に垂直的な硬組織と軟組織の長さの不調和によるもの。
- 診断
- 上突咬合
左上は叢生状態も加わっており、2本の抜歯が必要。また第3大臼歯まで存在しており、抜歯部位は患者サイドの背景も考慮して選択します。
■治療期間
2年0ヶ月
■治療内容
スタンダードエッジワイズ装置より治療をおこないました。抜歯は小臼歯3本、右上2・左上2の合計5本です。
変色していた失活歯の右上1番(中切歯)は、かかりつけの一般歯科で漂白処置を施しました。
※1 High Angle Case
上下の顎の咬みあわせを、第一大臼歯(6番の奥歯)の位置関係で表した分類をアングルの不正咬合分類と言います。
1級、2級、3級があり、1級は第一大臼歯が正常に咬み合っている状態、2級は上の第一大臼歯が下の第一大臼歯よりも前方にある状態(上顎前突・出っ歯)、3級は下の第一大臼歯が上の第一大臼歯よりも前方にある(下顎前突・受け口)症例となります。第一大臼歯の位置関係を示すものであるため、正常に咬み合っている1級であっても、前歯が叢生などの不正咬合になっている場合があります。
また、骨格の状態(顎の角度)から更にHigh Angle(顎が細い)・Low Angle(顎が広い)のどちらかに分類することができます。
※2 オーバージェット
咬み合わせた際の、上の前歯が下の前歯に被さる前後の距離のこと。
上の前歯がわずかに前方に出ているのが正常な状態ですが、上の前歯の突出が過度(6mm以上が目安)になると上突咬合(いわゆる上顎前突・出っ歯)となります。マイナスの状態(上の前歯より下の前歯の方が前に出ている状態)を下突咬合(いわゆる下顎前突・反対咬合・受け口)といいます。
治療について
こちらの患者さんは、「大人の矯正上突咬合(出っ歯)case1」のようにヘッドギアは使わずに、通常のスタンダードエッジワイズ装置による矯正治療をおこないました。
■治療前
■治療後
■抜歯の理由
通常では上下左右で4本の抜歯をおこないますが、こちらの患者さんは5本の抜歯が必要でした。 正しい咬合は上下の第一大臼歯(6番)が山と谷で咬みますが、こちらの患者さんは左上の第一大臼歯が前方へ大きくずれて上下の6番が山と山で咬み、著しい上顎前突となっていました。左上は第三大臼歯(8番)も存在し、奥歯が生えるスペースがきゅうくつな状態で、加えて叢生(でこぼこ)も見られたため、側切歯(2番)の他に第二小臼歯(5番)も抜歯しなければきちんとした咬合が得られませんでした。
上顎の抜歯部位が4番(第一小臼歯)ではなく2番(側切歯)であるのは、右上2番の歯の保存が不可能であり、左上2番の歯の角が咬耗して形がよくないこと、ヘッドギアの協力が生活上困難であること、通院の都合で治療期間を短くしたいという患者さんの背景を考慮したためです。左右ともに2番を抜歯することで、左右の前歯部咬合のバランスを取りました。
歯を保存することを優先して抜歯の本数を増やすことをためらう歯科医師もおいでのようですが、こちらのようなケースで左上に充分なスペースがない所で歯を無理に動かそうとすれば出っ歯を治しきれなくなりますし、やっと歯が並んでも咬頭嵌合(上下の歯ができるだけ多くの部位で接していて、安定して咬める状態)を得られない中途半端な治療結果となってしまいます。
私たち矯正歯科の専門医は、このようなケースでは、多数歯を除去しなければならないことを経験しています。ですからきちんと治すために抜歯をおこない、患者さんにも自信をもっておすすめすることができるのです。
